アトピー体質の人の大きな特徴の一つに、たしかに乾燥肌があります。 これは、皮膚の一番表面にある角層という層の保湿機能が 正常の人と比べて、体質的に低下しているからです。
人間の皮膚は、皮膚の最上層の角層がしっかりしていると、 皮膚の水分を外へ逃がさない仕組みになっています。このことで皮膚の湿度が 保っていられるのです。これを角層の保湿機能と呼びます。 しかし、アトピー体質の人は″Xerosis(乾皮症)″といって、この角層の 保湿機能が弱く、角層の下にある皮膚の水分が角層を通って表面へ 逃げ出してしまいます。そのために、アトピーの人は、乾燥肌をしており、 症状が悪化すると、ますますこの乾燥肌が増悪してしまいます。
この角層の保湿機能を科学的に測定できる方法があります。アトピー体質の人の 角層を薄く剥がし、ガラス板・濾紙の上に乗せて、両端をテープで密着させて 測定すると、濾紙の水分がどんどん失われることが分かります。 しかし、健康人の角層だと水分はなかなか逃げ出しません。
この現象は、アトピー体質の人の皮膚であれば、患部の角層でも、 その他の皮膚でも同じ現象(保湿機能の低下)がみられます。
また、過酸化脂質は、角層の保湿機能の実験で興味深い反応を示します。 正常人の角層を剥がして、ガラス板・濾紙の上に置き、両端をテープで 密着した後、最上層の皮膚の上にエーテルやアルデヒド、過酸化脂質を 数滴落とすと、保湿機能の強力であった角層が障害を受け、保湿機能が 低下して、水分が上へ逃げ始めます(文献、英文K.Hashimoto-Kumasaka参照)。
したがって、環境汚染にさらされる期間が長い分だけ、小児よりも 成人に重症のアトピー性皮膚炎が続出してきた事実は、環境汚染の 観点から考えると、よく理解できることです。
もちろん、アトピーは体質性のものですが、環境汚染のなかった時代には、 その体質だけで終わり、角層の保湿機能の低下という本質的な欠陥も 軽い症状で済み、学童期の前には、この保湿機能の低下が回復して治癒していました。
それが、環境汚染によって過剰な活性酸素が発生するにもかかわらず、 活性酸素を取り除く体内のSODが、アトピー患者は体質的に少ないために 活性酸素を取り除くことができず、脂と結合して過酸化脂質を どんどん作ってしまうのです。
そのため、学童期までには回復するはずの角質の保湿機能が、実際には 回復するどころか、どんどん作られる過酸化脂質によって、角層が破壊され、 保湿機能の低下がますます進行して、アトピー性皮膚炎がさらに 悪化するようになったと考えられます。
以上のことをまとめると、次のようになります。
<アトピー体質の本質>
(1)角層の保湿機能の低下(乾燥肌)。
(2)(子供の何割かに存在する)食事アレルギーが皮膚炎を悪化。
(3)体内に悪い脂が体質的に多い。また、必要な脂が少ない。
(4)活性酸素を取り除くSODのカが弱い。