「痛み、腫れ、熱、痒み、ブツブツ」、何でもドンピシャリと抑えてくれます。
しかし、決して病気を治しているのではありません。従って、治る病気、例えば、 山に行って「ハゼ」にかぶれて顔が腫れ目が開かなくなった時、これはハゼの木の 下に行かないと二度とこのようなことは起こりませんので、ステロイドをかなりの 量を点滴の中に入れて注射しますと、数分で腫れがとれて、目が見えるようになる 非常に有り難いクスリです。
薬害反対の先生方がステロイドを非難されますが、このような患者さんには 是非使っていただきたいと思います。これは西洋医学の得た科学の恩恵であります。
ところが、治らない病気、何10年も続く病気、例えば、ここでは膠原病、 また、最近のアトピー性皮膚炎、喘息です。
抑える力が抜群ですので症状が おさまって楽になりますが、減量したり中止するとこれらの病気は治る病気では ありませんので、必ず再発します。従ってまた使用します。
ところが、ステロイドは短期間ですとそれほど問題はありませんが、特に全身に、長期連用すると、 副作用が強く出てきます。
まず、糖尿病、白内障、緑内障、胃潰瘍で血を吐き、 5年、10年、15年使っていると骨や筋肉がボロボロになって来ます。 ですから、「ハゼ」にかぶれたような完治する病気なら使ってよいのですが、膠原病、喘息、アトピーに 使うと、止められなくなって、そのうち副作用が出て来て最後は 骨や筋肉がボロボロになってしまいます。
また、もう一つステロイドの弊害は、治療を中止すると悪くなり(前門の虎)、 続けていると副作用が出る(後門の狼)。それに加えてもう一つ、副作用が恐い ので急に中断すると病気が悪くなると同時に、麻薬同様あるいは麻薬より強い 『禁断症状』(両サイドのライオン)が出ます。この禁断症状は、食思不振、 嘔気、嘔吐、頭重、不快感、脱力感、更には呼吸困難などがあります。
私は、30年近く前、13年間ステロイド3錠飲んでいた喘息の男性患者さんを、 入院させ少しずつステロイド減量し、離脱の方向に持っていきましたが、 4ヶ月目でしたか、急に強い呼吸困難を起こし死亡した非常に苦い経験を持っています。
なお、最近は、全身にほとんど作用を及ぼさない吸引薬のステロイドができており、 喘息の死亡例を著明に減少させています。
要するに、ステロイドは切れ味はよいが、"前門の虎、後門の狼"、両サイドに ライオンがいるような、ある意味では非常に恐ろしいクスリです。